フォルトーナがこだわる本物の秋田杉。
いったいどんな場所で、どんな人に育てられているのか、秋田県までバイクで見に行って来ました。
杉が生えている山の奥深くまで潜入し、製材工場で秋田杉ひとすじ40年以上の材木屋さんにたっぷり話を聞いてきました。
私がなぜこんなにも秋田杉が好きなのか?その理由をほんの少しだけでもお裾分けできればと思います。
株式会社くどうはじめ材木店(秋田県能代市)
代表:工藤 肇さん (以下、工藤社長)
創業者 (71歳) 18歳から材木業界に入り今年で43年の大ベテラン!
専務:工藤 晃さん (以下、工藤専務)
とにかく秋田杉!山の中までご案内いただきました。
日本一生産効率の悪い製材工場!?
工藤専務「いえいえ。宜しくお願いします。早速、山を見に行きましょうか?」
高橋「え?いきなり山ですか?」
工藤専務「そう。やっぱり木が生えているところの方がいいでしょ?」
高橋「そうですね!じゃあ行きましょう!」
そして車で山中へ・・・・
工藤専務「そう。みんな植林した木。 戦後からたくさん植えてるのでなんとか活かさないといけないですね。」
高橋「植林ですか。天然木はあるんですか? 」
工藤専務「山奥に行かないとないんです。この辺は小径木ばっかり。先が尖っている木は成長中なんですよ。」
高橋「なるほど!」
高橋「・・・・こんな民家近いのに、『くま出没注意』・・・。」
工藤専務「はは。普通に出ますよ。」
高橋「普通に・・・ですか・・・。」
工藤専務「ここからです、ここから。道路にまだアスファルトがあるでしょ。」
高橋「まだ奥に行くんですか?」
工藤専務「まだまだですよ。ここらへんはまだ人が来れるところ。 公園があったりキャンプしたり。よく子供を連れてきたりしてましたよ。こっからが長いんですよ。 ここからは10kmくらいはこんな感じ。」
~数十分後~
工藤専務「いやっ、走るよ。丸太は10tで運ぶから。」
高橋「えっ!こんな狭い道を?!」
工藤専務「こんなもんは、まだまだ(笑)」
~そしていよいよ天然の秋田杉とご対面~
~そしてふもとの製材工場まで戻ってきました~
工藤社長「そうでしょう。丹精込めて育ててますから。」
高橋「納得です。今日はそんな秋田杉についてお話をお伺いしたいのですが。」
工藤社長「いいですよ。よろしくお願いしますね。」
工藤社長「親父が代々にわたって山を育てていたので、私も山を見て大きくなりました。製材業を始めた私も、とにかく木材・・・しかも秋田杉にはこだわりました。
今は合板・集成材の時代ですが、でもそこには目もくれず秋田杉にこだわってきた。
加工品ではなく、原型に近いものはやはり良いんですね。ウソがない。
だからお客様にも、浪花節のように木の持ってるストーリーを大事にしてくれと、繰り返し繰り返しお願いしてるんです。」
高橋「無垢材は良いですね。」
工藤社長「今の時代、木が健康な状態で流通していないんです。集成材、大量生産は木を大事には扱っていない。木の付加価値を高くするというのは、やっぱり無垢材じゃないと、山にも還元できないんですね。」
高橋「今日も伐採の様子を見てきたんですけど、植林ありきで伐採していますもんね。伐採はしているけど、間伐メインでやっている・・・」
工藤社長「そうそう。間伐というのは、昔は補助的な役割だったんです。でも今は、低価格で処分してもいいやという雰囲気。これは本当の手入れじゃないんです。」
高橋「我々も適正なものを適正に買わないと、山にも還元できないんですよね。」
工藤社長「今は小ぶりの材木が多くて値段も安い・・・。70年、80年育ててやっと一人前の木になるのに、そこまで待てない。待たない。ここわずか10年くらいの間にそんな流れになってしまいました。最初から『この値段じゃないと買わない。』なんてことをいう住宅メーカーやゼネコンが多くなりました。木の本当の良さを活かすことは年々難しくなってきています。」
高橋「社会的な問題になってしまいましたね。」
工藤社長「集成材も合板も『木』という表現を使うけど、あれは木じゃありません。殺して、貼りつけて作ったものを『木』だって言うんだから。今の住宅に使われる木は呼吸ができない。木はある程度呼吸しないとよくない。今の家づくりを見てると木がいじめられてるようで涙が出てきますね。」
●社長の商品、ヨソには絶対負けない
工藤社長「木材ならなんでも供給できるのがウチの誇りです。九州にも四国にも材木を届けてきた。そういう過去があるからこそ、こうやってあなたみたいに木にこだわっている方が訪れてくれるのかもしれない。俺らが心を込めて育てた材木だから、やっぱり顔の見えるお客さんに買って欲しい、使って欲しいと思いますね。」
高橋「そこまでこだわるのはなぜですか?」
工藤社長「俺はこの森で育ってます。親父が苗木を植えてきた姿も見てるし、実際に山で伐採する姿も見てる。ここで育った山が四国まで行って、どんなお客様の家になっているのか、そこにどんな生活があるのか。そこまで知りたいからね。そういうストーリーを大切にした建物っていうのが、最近なくなってきましたね。」
高橋「これからの林業はどうなるんでしょう?」
工藤社長「昔は国自体が『国の宝は山だ!』と言ったし、我々も一生懸命山を育ててきた。
けど、今は「現状」本位の経済が優先。息子・孫のために、次の代に・・・という、受け継いでいく林業ができなくなってきました。経済活動だけでは、世の中は循環していかない。100年先、200年先の利益や幸せを見据えて、守らないといけないものがある。
そこを今の若い人たちには考えてもらえると嬉しいですね。」
高橋「なるほど。」
工藤社長「今の工業商品をうまくミックスさせれば150年残る仕事ができる。業界関係者全員がテーブルを囲って、『職人は育てないといけない』ってルールを決めてかないと。目先の利益ばっかりを優先していたら、日本はダメになってしまいます。あなたが国会議員になって、そういうのやって!(笑)」
工藤社長「それは嬉しいね。ウチの材料はゆっくり時間をかけて乾燥させてます。非効率かもしれないけど、天然乾燥した木はやっぱりいい。強度も出るし、色気もある。集成材は30年・40年の耐用年数って言われてるが、天然スギは100年でも150年でも持つ。次の代まで代々受け継がれていくのは嬉しいことですね。」
高橋「そうですね。ますます秋田杉が好きになりました。」